1993年3月 弘前大学医療技術短期大学部 卒業
1994年4月 北海道勤労者医療協会
1998年4月 国立療養所八雲病院(現国立病院機構八雲病院)作業療法士
国立病院機構八雲病院作業療法士として、重度の筋ジストロフィー症者等のコミュニケーション支援機器等の活用を通じた生活支援に取組むエキスパートで、日本作業療法士協会制度対策部福祉用具対策委員会委員として作業療法士のIT機器を利用した臨床活動の支援のための講師としても活躍中。さらに、社会貢献活動として、難病等の当事者団体の支援講座の講師として臨床の経験とノウハウを直接当事者に指導するなど機器活用方法の普及啓発活動に取り組む。
まず、彼らが強調したいたことが、2つ。一つは、「ニーズに振り回されていませんか?」ということです。言葉に誤解があるかもしれませんが、このような機器開発にとって、当事者の意見は大切ですが、一つ一つのニーズ(要望)を拾い上げて道具をつくっていては、周りは道具で溢れてしまいます。
あったらいいなを形にしていくことは素晴らしいのですが、どんなものが一番大切なものかは、要望があった時点では、誰にもわからないのです。ものづくりでは、利用者と協業しながら、「あれはこれは?」とお互いに気づき会いながら試行錯誤していく、そのニーズを 十分に揉んでいく時間と過程が大切です。
二つ目は、できることが増えることは嬉しいが、道具が増えるのは困るということでした。
贅沢な意見かもしれませんが、私達でも、テレビやエアコンやオーディオ機器のリモコンばかり増えては困りますものね。できれば、生活をシンプルにしたいと思うものです。福祉用具は、できれば使いたくないといいます。一手間増えることが、「やってみよう」「つかってみよう」の壁になることもあるようです。
彼らからの意見で多かったのが、今回のアイディアを使うときに、実際、生活の中で継続して利用できるだろうか?でした。例えば、ハンバーガー班の場合ですが、ハンバーガーだけ頼むってことはないですよね。お金の支払いはどうするのだろう?ポテトを頼んだらどう食べるのだろう?独りなの?複数人なの?「自分で食べたい」というニーズだけど、どんなことを大切にしたいのだろう?など、実際の機器開発では、場面を想定して、どのタイミングで、道具を活用して課題を達成するかが大切となります。道具の導入でかえって、困難さを増やしてしまわないような視点が重要です。
天体の班も同様なことがいえます。視覚障害の方への教材ツールとしてとても、面白い視点だと思います。ただ、その教材を利用して、天文に興味をもった障害を持つ子が、もっと学びたいときに、次はどのようなツールがあるのだろう?せっかく興味をもっても、次の手立てがないと、そこから興味を育てていくことも止まってしまいますよね。筋ジストロフィーという障害を抱えた彼らが強調していたのは、できないよりはできたほうがよい。でも、なんでもよいわけでない。ということでした。ぜひ、利用者と一緒に開発に取り組んでくれるかたが増えたらいいなと思っております。